笹尾根


目の前に広がる展望がおよそやって来ないような、終わり無きブナ林のあしもとをただただてくてくと歩きたく、笹尾根にゆく。

バスを一人降りたあとも、山のなかで人に遭うことはなかった。

寄ってくるのは虫たち。聞こえるのはその羽音または鳥や風が木をゆする音。たまにある木漏れ陽に視界をほぐされつつ言葉の無い世界の自由のなかを。