山中湖日記

山中湖には、三泊した。
一日目、つまりたどり着く日は予約しておいた直通バスが台風の影響で道路通行止めが発生し、運休。諦めずちんたら電車やら振り替えバスやらふたたび電車やらで3時間押しで到着。その日は書と舞踏と料理を味わうという混ぜこぜ企画の日。
ただならぬ台風は古い民宿である会場の壁面ガラス張りを目一杯効果的に使った演出のように木を大きくうねらせ、雨粒を斜め45度に運び、ごうごうと音を立てた。舞踏も書もその自然のなかの一部であるかのよう。パフォーマンスの後の料理も忘れられないくらい美味しかった。。というか、味に驚いた。
二日目もやはり衰えを知らない強い台風。隙間をぬって遅い朝ごはんに出ると、ざーっと降られてびしょ濡れ。ほうとうを食べる。
午後はトーク。これが目から鱗なほど「話を聞く」という概念をゆさぶるものだった。濃くて受け取るものがあまりにも多く、もしかして自分の何らかの節目になってしまうのでは?という内容だった。「たのしい」という実感はこのような時間を通してもたらされるのではないか。「このような」という説明を余韻を含めてゆっくり自分にしていきたい。
三日目。深夜、古くからの土地のお祭り「安産祭り」。台風や雨といった状況で実施の有無を決めるものではなく、やらなければならない神事であった。それは公開されながらも秘められたもので、だからこそ人はずっと毎年これを見届けにくるのだろう。
四日目。ウソのように晴れる。窓を開けるとまるで別の土地のようだ。ぱたぱたと帰り支度をしバスを使って新宿へ。
宿主に『かかわり方のまなび方』(西村佳哲著)という本をいただいた。「『み』と『か』と『じ』、どれが文字で好きですか?」と聞かれて、その時いた三人がそれぞれにばらけるように答え、わたしは『か』ということになり、するとこの本を渡されたのだった。