夜桜能の座席番号通知が届く。春待ち。ちょっと早めに出かけて参道に並ぶ露店で少しお酒を呑んだりし、ぬるい風に吹かれる桜の下で能を観る。夕暮れに火入れをして、演目が進むにつれてやってくる夜の暗がり。時間が経つこと、太陽はのぼってそしてゆっくり沈むということ、日が落ちたら見えてくる景色のこと、あっちの世界とこっちの世界のこと。(むかしのひとはどんなふうに観ていたのだろう。)
夜桜能を観るようになってから、春がずっとずっと楽しみになった。

こないだ観た『ブリスフリー・ユアーズ』。水辺の美しさ、というのがあるのだとしたら、潤いをもたらす優しさとしてではなく、生のみなもとという、そして生が還っていくというところでの太くて強くて恐ろしさも含めたもの。森は、山は、それを内包し、見守り続けている。その存在感たるや。。こわくてうつくしいそして在り続けるものことへの畏敬。